本研究は,自己評価的尺度を因子分析した際にしばしば得られる逆転項目(否定的項目)と順項目(肯定的項目)の方法因子について,自己評価的尺度一般にみられる現象かどうか,また,年齢別の特徴があるかどうか,ローゼンバーグ自尊感情尺度と特性的自己効力感尺度を用いて検討した。調査データは,15歳から69歳の2,830名であった。研究Ⅰでは,ローゼンバーグ自尊感情尺度に自尊感情と方法因子を仮定したモデルを検討するとともに,年齢が高くなるにつれて,方法因子の合成変数の相関が高くなる可能性を検討した。その結果,予想は支持された。研究Ⅱでは,ローゼンバーグ自尊感情尺度と特性的自己効力感尺度を同時に分析した。その結果,それぞれの尺度に各構成概念とそれぞれに特有の方法因子を仮定するモデルが支持された。一方で,両尺度の肯定的方法因子はナルシシズムと,両尺度の否定的方法因子はストレス反応と,尺度間でそれぞれ類似した関連を示したため,自己評価的尺度一般に共通の方法因子を仮定できる可能性も示唆された。この他,因子負荷量について尺度間で異なる年齢的変化を予想できる結果が得られた。