LPOを添加した発酵乳では硬度が低下する.この原因を明らかにする目的で,発酵乳およびGDLを添加した還元脱脂乳にOSCN-を添加し,ゲルの硬度を測定した.Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus,Streptococcus thermophilusの混合菌株を使用して調製した発酵乳は,OSCN-添加濃度に依存して硬度が低下した.また発酵乳中の遊離アミノ酸量はLPOやOSCN-を添加しても変化しなかった.さらにGDLによる還元脱脂乳ゲルにおいても,OSCN-添加濃度に依存して硬度が低下した.したがってLPシステムによる発酵乳の硬度低下は,OSCN-が乳タンパク質のゲル化に直接影響を与えたためであることが明らかとなった,次にβ-LGのSH基の反応性を検討した結果,加熱処理によって高まったSH基の反応性はOSCN-の添加によって低下することが明らかとなった. 以上のことから,LPOを添加して調製した発酵乳の硬度が低下する理由は,LPシステムによって生じたOSCN-がβ-LGのSH基の反応性を低下させ,その結果β-LGとκ-カゼインの会合によるゲル形成を阻害するためと推測する.また乳酸菌はLPシステムにおいて,酸産生による乳タンパク質のゲル化とLPOの基質であるH2O2産生の役割を担うが,硬度低下に直接的には関与していないと考える.