本報では動的衣服圧, 動作時の身体の伸びとずれの関係, 筋電図の計測により, スラックスの拘束性について多角的に評価し, 運動機能性の高いスラックス設計のための基礎資料を得ることを目的とした. 同一のパターンで作られた4素材のスラックスと4段階のゆとりを有するスラックスを着用した時の拘束性がどのように異なるかについて比較を試みた. 1) 衣服圧についてドーム法による推定値とセンサ値の関係を調べた結果, センサの計測値は高い傾向を示し, 布により異なった関係を示した.これらをもとにそれぞれ布ごとにセンサ値の較正を行い, より精度の高い衣服圧を求めることができた. 2) スラックスを着用して立位姿勢からしゃがみ込み姿勢を行うとき, 膝と殿部の衣服圧は, しゃがみ込み直後に最大となりその後減少がみられた.衣服圧は, 素材の力学的特性や腰囲や後ろ股上でのゆとり量の影響を受けて変化し, 拘束性の度合を評価できる最適な指標の一つといえる. 3) スラックスを着用し立位からしゃがみ込み動作間で殿部と膝で布のすべりを調べた結果, 膝部でずれが多くみられた.ずれの分布より, 素材の伸長特性と摩擦力が拘束性に影響を与えると考えられる. 4) 筋電図の計測により, 衣服の拘束が運動時に与える影響について調べた.拘束力の大きいスラックスで, 大腿直筋の放電図に多少の差がみられ, 動きやすさに影響を与えていると思われた.