本論文では, 高次リテラシーとしての批判的統合に焦点を当てて, 近年増加しつつある複数テキスト処理研究のレビューを行った。まず, 批判的統合を相補的統合と対比し, 前者を, 批判的思考を土台にしながら複数テキストからの情報を統合する処理過程とその所産と定義した。そして, その必要性は特に, 学問分野の実践とそれに即した教育, 市民としての社会参加という文脈において顕在化することを論じた。本論文ではさらに次の3点から先行研究の整理・総合を試みた。第1に, 先行研究をもとに, テキスト評価, テキスト間関係の理解, 裁定を批判的統合の中核的コンポーネントとして提案した。第2に, 学問分野の(準)熟達者と比較して, 初学者である学生はしばしばなぜ批判的統合を適切に行うことができないのかを読み手変数, すなわち, 方略利用, 課題表象, 個人的認識論の観点から検討した。第3に, 学生の批判的統合能力を改善するためにこれまで提案・検証されてきた教授介入方法を取り上げ, 批判的吟味を加えた。最後に, 今後の課題と展望を示して本論文を締めくくった。